小売DXコンサルタントとは?仕事内容やなる方法、キャリアアップなども解説

各業界でDX推進が求められ、小売業でも進められています。
しかし、単にDX化とは言っても簡単には進められません。
そこで、DXコンサルタントの力が必要になります。
この流れから小売業のDXコンサルタントに興味を持っているかたもいるのではないでしょうか。
そこで、本記事では小売DXコンサルタントの概要から仕事内容、キャリアアップなどを解説します。

目次
小売DXコンサルタントとは?

小売DXコンサルタントとは、小売業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する専門家です。
顧客体験の向上や業務効率化を目指し、デジタル技術を活用した変革を推進します。
具体的には、データ分析やAI活用、オムニチャネル戦略の構築など、小売業特有の課題に対してテクノロジーを駆使したソリューションを提案・実装する役割を担います。
小売業界のDX推進状況と課題
小売業界のDX推進は加速していますが、多くの企業がまだ道半ばの状況です。
EC市場の拡大やコロナ禍を契機としたデジタルシフトにより、オンラインとオフラインを融合したビジネスモデルへの転換が急務となっています。
しかし、レガシーシステムの存在やデジタル人材の不足、組織文化の変革の難しさなどが主な課題となっています。
特に中小規模の小売業者では、投資コストや専門知識の不足が障壁となっているケースが多いです。
小売DXコンサルタントの市場規模と成長予測
小売DXコンサルティング市場は急速に拡大しており、特に日本市場では、少子高齢化による労働力不足や消費者行動の変化を背景に、自動化やデータ活用による効率化・パーソナライゼーションへの需要が高まっています。
小売DXコンサルタントの仕事内容と役割

小売DXコンサルタントの仕事内容や役割は多岐にわたります。
ここでは、仕事内容や役割を紹介します。
小売DXの定義と範囲
小売業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術の導入だけではなく、ビジネスモデル全体を再構築する取り組みです。
具体的には、顧客接点のデジタル化(ECサイト構築、アプリ開発など)からバックオフィス業務の効率化(在庫管理、発注自動化など)、さらにはデータ分析に基づく意思決定の高度化まで幅広い領域をカバーします。
テクノロジーを活用した顧客体験向上においては、顧客ごとに最適化されたレコメンデーション、シームレスなオムニチャネル体験の構築、AR/VRを活用した新しい購買体験の創出などが含まれます。
一方、業務効率化では、AIによる需要予測、ロボティクスを活用した物流改革、クラウドベースの統合システム導入などが主な取り組みとなっています。
小売DXコンサルタントの主な業務
小売DXコンサルタントの業務は多岐にわたります。
まず現状分析と課題抽出では、クライアント企業の業務フローやシステム環境、顧客データなどを詳細に分析し、デジタル化によって解決すべき課題を特定します。
DX戦略立案とロードマップ作成では、経営目標に沿ったデジタル戦略を策定し、短期・中期・長期の実行計画を立案します。
投資対効果を考慮しながら、段階的な実装プランを提示することが重要です。
技術選定と導入支援においては、クライアントのニーズや予算に合わせた最適なテクノロジーソリューションを選定し、ベンダー選定から実装、テストまでを支援します。
クラウドPOSシステム、在庫管理システム、CRMツールなど、小売業に特化したソリューションの知識が求められます。
そして、組織変革と人材育成支援では、デジタル変革を推進するための組織体制の構築や従業員のデジタルスキル向上のためのトレーニングプログラムの設計・実施を行います。
効果測定と継続的改善も大切な業務であり、KPIの設定と定期的なモニタリング、データに基づく改善提案を行い、DX施策の効果を最大化します。
小売DXの4つの切り口
小売DXでは主に4つの切り口があります。
まずは在庫最適化のためのDXでは、AIを活用した需要予測、リアルタイム在庫管理、自動発注システムなどの導入により、在庫の適正化と機会損失の削減を実現します。
RFIDやIoTセンサーを活用した在庫の可視化も重要な要素です。
そして、業務フローのDXにおいては、店舗オペレーションの自動化・効率化を推進します。
セルフレジ、電子棚札、ロボットによる棚卸し作業など、テクノロジーを活用した業務改革を支援が具体例です。
また、会計のDXでは、クラウド会計システムの導入やキャッシュレス決済の拡充、売上データのリアルタイム分析などを通じて、財務管理の効率化と経営判断の迅速化を図ります。
ほかにも顧客とのつながりに関するDXでは、顧客データプラットフォームの構築、パーソナライズされたマーケティング施策の展開、LINEやSNSを活用した顧客エンゲージメント強化などを支援します。
小売DXコンサルタントに必要なスキルと知識

ここからは、小売DXコンサルタントに必要なスキルや知識を紹介します。
業界知識
小売DXコンサルタントには、小売業界の構造と特性の理解が不可欠です。
商品調達から販売までのバリューチェーン全体を把握し、業態別(百貨店、スーパー、専門店、EC等)の特徴や課題を理解していることが求められます。
また、季節性や商品回転率、粗利構造など、小売業特有の経営指標にも精通している必要があります。
そして、サプライチェーンマネジメント(SCM)の知識も必要です。
調達・物流・在庫管理・販売の各プロセスがどのように連携しているかを理解し、デジタル技術を活用した最適化提案ができなければなりません。
特に近年は、需要予測の精度向上やラストワンマイル配送の効率化など、テクノロジーを活用したSCM改革が注目されています。
また、オムニチャネル戦略の理解においては、実店舗とECサイト、SNSなど複数のチャネルを統合し、一貫した顧客体験を提供するための戦略立案能力が求められます。
顧客接点の設計や在庫の一元管理、統合的な顧客データ活用などの知識が必要です。
テクノロジースキル
データ分析・AIの基礎知識は現代の小売DXコンサルタントにとって必須のスキルです。
顧客行動データの分析、需要予測モデルの構築、レコメンデーションエンジンの活用など、データサイエンスの知識を持ち、クライアントにとって価値あるインサイトを導き出せることが重要です。
必ずしも自らコーディングする必要はありませんが、分析手法や結果の解釈ができる能力は不可欠です。
クラウドサービスへの理解や知識も大切なスキルです。
AWS、Azure、GCPなどの主要クラウドプラットフォームの特徴を理解し、小売業に適したクラウドソリューションを提案できることが求められます。
SaaS型の小売向けアプリケーションの知識も必要です。
ほかにも、ECプラットフォームの知識では、主要なECプラットフォーム(Shopify、楽天市場、Amazon等)の特徴や連携方法などを理解していることが重要です。
モバイルコマースやソーシャルコマースなど、最新のEC動向にも精通している必要があります。
コンサルティングスキル
コンサルティングスキルとして、問題解決能力は基本スキルです。
クライアントの課題を正確に把握し、複雑な問題を構造化して解決策を導き出す論理的思考力が求められます。
また、業界のベストプラクティスを理解し、クライアント固有の状況に適応させる応用力も重要です。
また、プロジェクトマネジメントスキルも不可欠です。
DX推進プロジェクトは多くのステークホルダーが関わる複雑なものになりがちなため、スコープ・スケジュール・予算・リスク管理など、プロジェクトを成功に導くためのマネジメント能力が求められます。
クライアントコミュニケーションでは、技術的な内容を非IT部門の経営者や現場担当者にもわかりやすく伝える能力が重要です。
また、クライアントの真のニーズを引き出すヒアリング能力や、信頼関係を構築するための対人スキルも求められます。
さらに、提案・プレゼンテーション能力も必要で、DX戦略や施策の価値をクライアントに説得力をもって伝える能力が求められます。
ROIを明確に示し、経営層の意思決定を後押しできるような提案力は必須でしょう。
取得しておきたい資格
小売DXとして活動する際は、さまざまな資格を取得しておきたいところです。
たとえば、ITパスポート、基本情報技術者などの情報処理技術者試験は、IT基礎知識を体系的に習得していることを証明する資格として有用です。
特に非IT出身者がキャリアチェンジする際には、基礎的なIT知識の証明として役立ちます。
PMP(Project Management Professional)は、国際的に認知されたプロジェクトマネジメントの資格であり、DX推進プロジェクトを管理する上で有用なフレームワークと知識を提供します。
データサイエンス関連資格としては、データサイエンティスト検定やGoogle Analytics認定資格などが、データ分析スキルの証明として役立ちます。
小売業のデータ活用が進むなかで、これらの資格の価値は高まっています。
小売DXコンサルタントになるには

小売DXコンサルタントになるために、いくつかのケースに分けて解説します。
新卒で目指すには
新卒から小売DXコンサルタントを目指す場合、大手コンサルティングファームやITコンサルティング企業への就職がよくあるパターンです。
これらの企業では体系的な研修プログラムがあり、コンサルティングの基礎からDX関連の専門知識まで習得できます。
就職活動においては、大学時代のインターンシップ経験やデータ分析コンペへの参加、小売業に関する研究やプロジェクト経験などをアピールポイントにすると良いでしょう。
また、ビジネスコンテストなどで実践的な問題解決能力を示すことも有効です。
入社後はジュニアコンサルタントとして先輩コンサルタントのサポート業務から始め、徐々に責任ある役割を担っていくのが一般的です。
小売業界のプロジェクトに積極的にアサインされるよう希望を出し、業界知識を深めていくことが重要です。
小売業界からの転身
小売業界での実務経験を持つ人材は、業界知識という強みを活かして小売DXコンサルタントへの転身が可能です。
特にデジタル部門やマーケティング部門、SCM部門などでの経験は、コンサルタントとして活動するときに有効です。
転身を目指す場合は、自社内でのDXプロジェクトに積極的に関わり、実績を作ることが重要です。
また、業務外でもデータ分析やプロジェクトマネジメントなどのスキルを磨き、前述の資格取得も検討すべきでしょう。
転職先としては、小売特化型のコンサルティングファームやITベンダーのコンサルティング部門などが考えられます。
面接では、小売業界での実務経験から得た知見や具体的な課題解決事例をアピールすることが効果的です。
IT業界からの転身
IT業界からの転身では、テクノロジーに関するスキルを強みとしつつ、小売業界の知識を補強していくアプローチが有効です。
システムインテグレーターやITベンダーで小売業向けのプロジェクトに携わった経験があれば、それを足がかりにできます。
小売業界の知識を深めるために、業界セミナーへの参加や専門書の読み込み、小売業界向けのメディアのフォローなどを積極的に行うことがポイントです。
また、小売業のクライアントとの関係構築にも注力し、業界特有の課題や文化への理解を深めましょう。
転職活動においては、技術的な知識だけでなく、それをビジネス価値にどう結びつけられるかという視点をアピールすることが大切です。
技術と業務の橋渡しができる人材は、小売DXコンサルタントとして高い価値があります。
小売DXコンサルタントとしてのキャリアアップ

小売DXコンサルタントとしてのキャリアアップもさまざまな道があります。
代表的なキャリアアップの方法を解説します。
スペシャリスト
小売DXコンサルタントのキャリアアップとして特定領域のスペシャリストになり専門性を高める道があります。
たとえば、データアナリティクス、CRM戦略、サプライチェーン最適化、オムニチャネル戦略などの分野で深い専門知識と実績を積み上げることで、その領域のエキスパートとして高い評価を得られるでしょう。
スペシャリストとして成功するためには、常に最新技術や業界トレンドをキャッチアップし、専門分野での知見を深め続けることが大切です。
業界カンファレンスでの登壇や専門誌への寄稿、ケーススタディの発表などを通じて、外部からの評価を高めていくことも効果的です。
マネージャー
プロジェクトマネージャーやチームリーダーとしてのキャリアを目指す場合は、技術的な知識に加えて、人材育成やクライアントリレーションシップ、ビジネス開発などのスキルを磨く必要があります。
大規模なDXプロジェクトを成功に導いた実績やクライアントからの高い評価が昇進のカギとなります。
また、マネージャーへのステップアップには、プロジェクト管理能力の向上が不可欠です。
複数のコンサルタントをまとめ上げ、クライアントの期待を超える成果を出せるリーダーシップが求められます。
それから、新規ビジネスの開発や提案活動にも積極的に関わることで、マネジメント層への道が開けます。
独立コンサルタント
経験を積んだ後のキャリアオプションとして、独立コンサルタントの道も考えられます。
特定の業界や技術領域で確固たる実績と専門性を持ち、独自のクライアントネットワークを構築できれば、フリーランスとして高い報酬を得ることも可能です。
独立する際には、自身の専門領域を明確に定義し、差別化したサービスの提供がポイントです。
また、安定した案件獲得のためのマーケティング活動や複数のプロジェクトを同時に進行させるためのタイムマネジメント能力も必要です。
独立初期は、以前の勤務先や取引先からの紹介案件が中心となることが多いため、良好な人間関係の構築も意識してください。
コンサルタントの案件獲得ならExpertyがおすすめ

小売DXコンサルタントとして活躍するためには、質の高い案件の獲得がポイントです。
そこでおすすめなのが「Experty」です。
Expertyは、スキルや専門性に合ったコンサル案件を効率的に見つけられるサービスです。
自分から案件を探す手間が省け、自分の専門性に真に興味を持った企業からのアプローチが期待できます。
また、案件の単価も一般的なフリーランス向けプラットフォームと比較して高めに設定されており、専門性に見合った報酬を得やすい環境となっています。
この機会にExpertyに登録して、自分に合う案件を見つけてみませんか。

まとめ

小売DXコンサルタントは、急速に変化する小売業界において、デジタル技術を活用した変革を支援する重要な役割を担っています。
業界知識とテクノロジースキル、そしてコンサルティング能力を兼ね備えた専門家として、高い需要と将来性を持つ職業といえるでしょう。
新卒、小売業界、IT業界などさまざまな立場からこの職種を目指すことが可能であり、スペシャリスト、マネージャー、独立コンサルタントなど、幅広いキャリアアップも可能です。

記事監修者の紹介
アメリカの大学を卒業後、株式会社NTTデータに入社。
コンサルティングファームへ転職しデロイトトーマツコンサルティング・楽天での事業開発を経て、取締役COOとして飲食店関連の会社を立ち上げ。
その後、コロニー株式会社を創業。